オーディオツール 総合マニュアル

このマニュアルでは、各オーディオツールにおける「トークバック(やまびこ)」や
「ループバック」を回避し、快適な配信・通話環境を構築する方法を解説します。

💡 はじめに:トークバックとループバックの回避

ライブ配信やオンライン通話において最も頻発し、かつ解決が難しいトラブルが「自分の声がやまびこのように返ってくる(トークバック)」や「音声が二重になる・ハウリングする(ループバック)」という問題です。

このマニュアルでは、各ツールでこれらの問題を回避し、快適な「ミックスマイナス(特定の音声を除外したミックス)」環境を構築する方法を詳しく解説します。

ミックスマイナス(Mix-Minus)とは?
通話相手の声がループして聞こえてしまうことを防ぐために、相手に送る音声ミックスから「相手から送られてきた音声」だけをマイナス(除外)する技術です。Discordでの通話とOBSでの配信を両立させる際に必須の設定となります。
トークバック(やまびこ現象)の原因
OBS Studioの「デスクトップ音声」が有効になっている状態で、ミキサー側の「ループバック機能」をONにすると、PCの音がミキサーを経由して再びOBSに入力され、音声が二重に配信されてしまいます。これがやまびこ現象の最大の原因です。
ループバックの危険性
ループバック機能は「PCの再生音をそのまま配信に乗せる」便利な機能ですが、OBSのデスクトップ音声と併用すると音声が無限ループし、ハウリングや音割れの原因になります。OBSを使う場合は、ミキサー側でループバックをOFFにし、OBSのデスクトップ音声で取り込むか、ループバックをONにしてOBSのデスクトップ音声を無効にするか、どちらか一方に統一してください。
🎛️ 1. YAMAHA AG08 ハードウェア

ヤマハのAGシリーズのフラッグシップモデルであり、ライブ配信に特化したオールインワンのミキサーです。最大の特徴は、PCと接続した際に3系統の独立したUSBオーディオ入出力として認識される点です。これにより、複雑なソフトウェアミキサーを使わずに、物理フェーダーだけで直感的なミックスマイナス環境を構築できます。

入力デバイスの詳細解説(Mic, Streaming, AUX)

AG08をPCにUSB接続すると、録音デバイス(マイク)として以下の3つが認識されます。これらをアプリケーションの用途に合わせて正しく使い分けることが、トラブル回避の第一歩です。

PC側の入力デバイス名(録音)AG08からの音声ソース主な用途と設定先
Streaming (Yamaha AG08) AG08の全音声が含まれるミックス(Streaming ON/OFFスイッチでCH3/4, 5/6, 7/8を含めるか選択可能) OBS Studio、TikTok LIVE Studioの「マイク音声」として設定
Voice (Yamaha AG08) CH1とCH2のマイク音声のみを通す(自分のゲーム音などPCの音は一切含まれない) Discordなどのボイスチャットアプリの「入力デバイス(マイク)」として設定
AUX (Yamaha AG08) CH7/8のみを除外したミックス(マイク音声+PCのゲーム音やBGMなどが混ざった音) コラボ配信時など、ボイスチャット相手に自分のBGMや効果音を共有したい時の入力に設定
💡
ワンポイントアドバイス:Discordでの設定 Discordのマイク入力に「Streaming」を選んでしまうと、ゲーム音やBGMまで通話相手に送られてしまいます。必ず「Voice (Yamaha AG08)」を選択してください。

高度なルーティング:3系統USB出力の使い分け

PCからの出力(再生デバイス)も3系統に分かれています。Windowsのサウンド設定で、アプリケーションごとに音声を個別にAG08のチャンネルに割り当てることができます。

PC側の出力デバイス名(再生)AG08の物理チャンネル推奨される用途
Yamaha AG08 CH3/4 CH 3/4 フェーダー メイン音声:ゲーム音、ブラウザの音声、Windowsのシステム音
Yamaha AG08 CH5/6 CH 5/6 フェーダー ボイスチャット:Discord、Zoomなどの相手の声
Yamaha AG08 CH7/8 CH 7/8 フェーダー BGM・効果音:Spotify、YouTube Music、サウンドパッドなど

ミックスマイナス設定とトークバック回避(Discord連携)

「Discordの通話相手に、相手自身の声がやまびこのように返ってしまう(トークバック)」を防ぎつつ、「相手の声は自分のヘッドフォンには聞こえるが、配信(OBS)には乗せない」という設定の具体的手順です。

💡
相手にゲーム音も聞かせたい場合(コラボ配信など) Discordの入力デバイスを「Voice」ではなく「AUX (Yamaha AG08)」に設定します。これにより、相手には「あなたのマイク音声」+「PCのゲーム音やBGM(CH3/4, 5/6)」が送信されます。このとき、Discordの出力先をCH7/8に設定しておけば、AUXにはCH7/8が含まれない仕様のため、相手の声がループ(トークバック)することはありません。

OBS Studio / TikTok LIVE Studio 連携設定

AG08でミックスされた完璧な音声をOBSで配信するための設定です。二重音声を防ぐことが最も重要です。

  • OBSの「設定」>「音声」を開きます。
  • 「グローバル音声デバイス」セクションの「デスクトップ音声」および「デスクトップ音声2」をすべて「無効」にします。(※超重要:AG08側でPC音声をミックスして送るため、OBSで拾うと二重になります)
  • 「マイク音声」に「Streaming (Yamaha AG08)」を選択します。
  • OBSのメイン画面の「音声ミキサー」には、「マイク音声」のメーターが1つだけ表示されている状態が正解です。

TikTok LIVE Studioでも基本的な考え方はOBSと同じです。

  • TikTok LIVE Studioの左下の歯車アイコンから「音声設定」を開きます。
  • メインマイク(Mic)の入力として「Streaming (Yamaha AG08)」を選択します。
  • システム音声(スピーカーアイコン)は、音量スライダーをゼロにするか、デバイスを削除して無効化します。
🎛️ 2. YAMAHA AG06 MK2 ハードウェア

シンプルで直感的な操作が可能な、定番のライブストリーミングミキサーです。AG08のような3系統USBはありませんが、「TO PC(STREAMING OUT)」スイッチの切り替えで柔軟な配信が可能です。

TO PCスイッチ(STREAMING OUT)の使い分けとループバックの罠

AG06 MK2の配信設定の要となるのが、本体中央にある「STREAMING OUT(旧モデルではTO PC)」スイッチです。ここを間違えると音声トラブルに直結します。

モード動作内容(PCへ送られる音声)推奨される用途
DRY CH 1-2 CH1とCH2の入力音声(エフェクト無し)をそのままPCに送る DAWでの音楽制作(マルチトラック録音)、音声編集
INPUT MIX AG06に入力された音声(マイク、楽器等)のみをミックスしてPCに送る。PCの音は配信に乗らない OBSやTikTok LIVEでの通常配信(推奨)
LOOPBACK AG06の入力音声と、PCから再生されている音声をミックスして、再びPCに送る スマホ配信、またはOBSを使わずにZoom等でBGMを流したい場合
🚨
警告:ループバックによる音声二重化・ハウリング OBS Studioで「デスクトップ音声」を有効にしている状態で、AG06のスイッチを「LOOPBACK」にすると、PCの音がOBSで二重に取り込まれ、エコーや激しいハウリングの原因になります。OBSを使う場合は、スイッチを「INPUT MIX」にするのが基本中の基本です。

OBS / TikTok LIVE Studio 連携設定(INPUT MIX推奨)

AG06 MK2とOBSを組み合わせた最も安定する設定方法です。

  • AG06本体のSTREAMING OUTスイッチを「INPUT MIX」に設定します。
  • OBSの音声設定で、マイク入力として「ライン (AG06/AG03)」を選択します。(これでマイクの声だけがOBSに入ります)
  • PCのゲーム音やBGMは、OBS側の「デスクトップ音声(既定)」を有効にして取り込みます。
  • Discordの通話音声も「デスクトップ音声」としてOBSに入ります。もしDiscordの声を配信に乗せたくない場合は、後述の「VB-Cable」や「Voicemeeter」などのソフトウェアを併用する必要があります。

TikTok LIVE Studioでも同様の設定です。

  • AG06本体のSTREAMING OUTスイッチを「INPUT MIX」に設定します。
  • TikTok LIVE Studioの音声設定で、マイク入力として「ライン (AG06/AG03)」を選択します。
  • システム音声を有効にして、PCのゲーム音やBGMを取り込みます。
📌
AG06 MK2の限界 AG06 MK2は単体ではミックスマイナスができません。Discordの音だけを配信から除外したい場合は、VB-CableやVoicemeeter Potatoとの併用が必要です。

応用:スマホ / PC 配信のシームレスな切り替え手順(USBスイッチャー使用)

USBスイッチャーを使用して、AG06の接続先を「スマホ」と「PC」で切り替える環境において、物理的な配線を一切変更せずに、OBSの音声もシームレスに運用するための設定手順です。

前提となる物理構成
スマホ配信時にPCで流しているBGM(OBS経由)を配信に乗せるため、PCのスピーカー端子からアナログケーブルでAG06のLINE IN(L/R)に常時接続している状態を前提としています。

1. OBSの音声設定(共通の工夫)

スマホ配信時とPC配信時で、OBS上のBGM音声モニターデバイスを複数用意することなく、1つの設定で済ませるための工夫です。

2. 切り替え時の「黄金ルーティン」(事故防止の必須手順)

WindowsやOBSの自動切り替えによるデバイス認識エラーや、音の二重化を防ぐため、配信の準備は必ず以下の順序で行ってください。

3. AG06本体のスイッチ設定(PC配信時の注意点)

PC配信時のループバックは厳禁!
PC配信を行う際は、AG06本体中央の「TO PC(またはSTREAMING OUT)」スイッチを必ず【INPUT MIX】にしてください。
※ここを【LOOPBACK】にしてしまうと、OBSのBGMがPCへ戻り、さらに配信に乗ることで視聴者に二重・三重に聞こえる深刻な放送事故になります。
🎮 3. Roland BRIDGE CAST X ハードウェア

ゲーム配信に特化した多機能オーディオインターフェースで、ビデオキャプチャー機能も統合されています。最大の武器は「デュアルバス構造」と「仮想オーディオデバイス機能」で、極めて柔軟なミックスマイナス環境を構築できます。

デュアルバス構造(STREAM MIX / PERSONAL MIX)

BRIDGE CAST Xは、本体内部に配信用と自分用の2つの独立したミキサーを内蔵しています。

バス名役割出力先
PERSONAL MIX自分のヘッドフォンから聞こえる音声のバランスを調整ヘッドフォン端子
STREAM MIX配信(OBSなど)に送られる最終的な音声のバランスを調整USB経由でPC(OBS等)

仮想オーディオデバイスの割り当て

PCと接続すると、用途別の仮想オーディオデバイスが作成されます。Windowsのサウンド設定で、各アプリの出力をこれらに割り当てます。

仮想デバイス名割り当てるアプリケーションの例
GAME (BRIDGE CAST X)PCゲーム、Steamのゲームなど
CHAT (BRIDGE CAST X)Discord、TeamSpeakなどのボイスチャットアプリ
MUSIC (BRIDGE CAST X)Spotify、Apple Musicなどの音楽再生アプリ
SYSTEM (BRIDGE CAST X)Windowsのシステム音、ブラウザなど

ミックスマイナス設定(Discord音声を配信に乗せない)

専用アプリ「BRIDGE CAST app」を使用して、STREAM MIX(配信用)からDiscordの音だけを除外します。視覚的に2つのミックスを作り分けることができます。

BRIDGE CAST app - ROUTING 画面イメージ

PERSONAL MIX (自分用)

MIC
CHAT (Discord)
フェーダーUP
自分には聞こえる
GAME

STREAM MIX (配信用)

MIC
CHAT (Discord)
ミュート (下げる)
配信に乗らない
GAME

OBS / TikTok LIVE Studio 連携設定

  • OBSの音声設定を開きます。
  • マイク入力として「STREAM (BRIDGE CAST X)」を選択します。これがBRIDGE CAST Xで作成した配信用のミックス音声です。
  • デスクトップ音声は無効にします。(BRIDGE CAST X側ですべてのPC音声がミックスされてSTREAMデバイスから送られてくるため、OBSでデスクトップ音声をオンにすると二重になります)
  • TikTok LIVE Studioの音声設定を開きます。
  • マイク入力として「STREAM (BRIDGE CAST X)」を選択します。
  • システム音声は無効にします。

BRIDGE CAST app の基本的な使い方

専用アプリ「BRIDGE CAST app」を使うことで、本体のツマミだけでは操作できない詳細な音質調整や、配信を盛り上げる機能にアクセスできます。

「MIC」タブでは、プロクオリティのマイク音声を作り込むことができます。

  • ノイズサプレッサー (Noise Suppressor)
    エアコンやPCのファンノイズなど、周囲の環境音を自動でカットします。
  • ディエッサー (De-esser)
    「サ行」の耳障りな摩擦音(歯擦音)を和らげ、聞きやすい声にします。
  • コンプレッサー (Compressor)
    小声と大声の音量差を自動で整え、常に一定の聞き取りやすい音量を保ちます。
  • イコライザー (Equalizer)
    声の低音を強調してラジオDJ風にしたり、高音を上げて抜けを良くしたりできます。

Rolandが誇る高品質なボイスチェンジャー(Voice Transformer)機能です。「VOICE CHANGER」タブで設定し、本体のボタンで瞬時に切り替え可能です。

Pitch (ピッチ)

声の「高さ」を変えます。
高くすると宇宙人風、低くするとモンスター風になります。

Formant (フォルマント)

声の「キャラクター(声道・骨格の響き)」を変えます。
男性の声を女性風に、または女性の声を男性風にする際に非常に重要です。

自然なボイスチェンジのコツ
PitchとFormantを少しずつ(例:+5~+10程度)組み合わせて調整すると、より自然な声の変換が可能です。

「BGM CAST」は、著作権フリーのBGMや効果音を配信に直接流せる機能です。

  • Roland Cloudアカウントでログインすると、アプリ内で直接BGMジャンル(Chill、Pop、EDMなど)を選んで再生できます。
  • 再生されたBGMは、BRIDGE CAST内部で自動的にミックスされるため、OBS側でブラウザの音を取り込むといった複雑な設定が不要になります。
  • 「EFFECT」タブにサウンドパッド機能があり、拍手や歓声などの効果音を本体のボタンに割り当ててワンタッチで鳴らすことができます。

「GAME」タブのイコライザーでは、ゲームの足音や銃声を強調して、FPSゲームなどで有利に立ち回るための設定ができます。

  • ゲーム別プリセット
    アプリ内にはあらかじめ「Apex Legends」「Valorant」など、人気ゲーム向けに最適化されたEQプリセットが用意されています。
  • プリセットを選ぶだけで、敵の足音が聞き取りやすい音質に変化します(この音は自分にだけ聞こえ、配信に乗るゲーム音は通常のままにすることも可能です)。
💻 4. Voicemeeter Potato ソフトウェア ドネーションウェア

PC上で動作する非常に高機能な仮想オーディオミキサーです。物理的な機材(AG08やBRIDGE CASTなど)を持っていなくても、ソフトウェアだけでプロ顔負けの複雑なルーティングとミックスマイナスを実現できます。

Aバス(物理出力)とBバス(仮想出力)の概念

Voicemeeterを使いこなすための最重要概念が「Aバス」と「Bバス」の違いです。

バス役割具体的な出力先
Aバス (A1〜A5) 「自分が聞く音」 ヘッドフォンやスピーカーなど、実際の物理デバイスへの出力先。通常、A1に自分のヘッドフォンを割り当てます。
Bバス (B1〜B3) 「相手(PCソフト)に送る音」 OBSやDiscordなど、他のソフトウェアへの仮想的な出力先です。

高度なミックスマイナス設定(ゲーム配信+Discord)

「自分の声とゲーム音は配信に乗せるが、Discordの相手の声は配信に乗せない」という、ゲーム配信で最も需要のある設定例です。

📌
事前準備 Windowsの規定のデバイスを「VoiceMeeter Input (VAIO)」に、Discordの出力デバイスを「VoiceMeeter Aux Input (VAIO3)」に設定しておきます。
入力ソース Voicemeeterのストリップ A1 (ヘッドフォン)
自分が聞く
B1 (OBS配信用)
配信に乗せる
B2 (Discord送信用)
相手に送る
マイク HARDWARE INPUT 1 OFF(自分の声は聞かない) ON ON
ゲーム音/BGM
(Windows規定の音)
VIRTUAL INPUT 1 (VAIO) ON ON OFF
Discordの相手の声 VIRTUAL INPUT 3 (VAIO3) ON OFF (ミックスマイナス) OFF(ループ防止)
💡
設定のポイント Discordの相手の声(VAIO3)のストリップで、B1ボタンをOFFにしているのがミックスマイナスの要です。これにより、配信(B1)には相手の声が送られなくなります。

OBS / TikTok LIVE Studio 連携設定

  • OBSの音声設定を開きます。
  • マイク入力として「VoiceMeeter Output (VB-Audio VoiceMeeter VAIO)」(これがB1バスの出力です)を選択します。
  • デスクトップ音声は無効にします。(Voicemeeter側ですべてミックスされているため)
  • TikTok LIVE Studioの音声設定を開きます。
  • マイク入力として「VoiceMeeter Output (VB-Audio VoiceMeeter VAIO)」を選択します。
  • システム音声は無効にします。
🔌 5. VB-Cable ソフトウェア ドネーションウェア

PC内部でアプリケーション間の音声を橋渡しする「仮想オーディオケーブル」です。Voicemeeterのようなミキサー画面はありませんが、単体で特定のアプリの音声を分離してOBSに送るなどの用途で非常に強力です。

Discordの音を配信に入れない設定例(単体使用時)

Voicemeeterを使わずに、VB-CableとOBSの機能だけでミックスマイナスを実現する方法です。AG06などのシンプルなミキサーを使っている方におすすめです。

応用:BGMを配信に乗せない(著作権対策)

💡
著作権対策としてのVB-Cable活用 Spotifyなどの音楽アプリの出力先を「CABLE Input」に設定し、上記と同じ手順を踏めば、「自分は音楽を聴きながらゲームをするが、配信には音楽が乗らない」という環境が作れます。
🎛️💻 8. AG08 × Voicemeeter Potato 徹底解説 ハードウェア ソフトウェア

YAMAHA AG08とVoicemeeter Potatoを組み合わせることで、AG08のハードウェアエフェクトと物理フェーダーの操作感を活かしつつ、Voicemeeter Potatoの5入力×5出力×8バスの超柔軟なルーティングで、単体では実現できない複雑な音声経路を構築できます。

📌
この組み合わせが有効なケース
  • 配信(OBS)・Discord・録画用・通話用(Zoom等)など4つ以上のバスに音を振り分けたい
  • VoicemeeterのVirtual ASIOドライバを使ってDAW(Cubase、Reaper等)と低遅延で連携したい
  • AG08のStreaming/Voice/AUXの3系統だけでは表現しきれない複雑なミックスマイナスが必要
  • 既にVoicemeeter Potatoを使い慣れており、追加の機材としてAG08を統合したい

構成コンセプト:2つの方式

AG08とVoicemeeter Potatoの組み合わせには、大きく分けて2つのアプローチがあります。目的に合わせて選択してください。

AG08の物理フェーダーで主要な音量バランスを取りつつ、Voicemeeter Potatoで「AG08に足りないバスの分離」を補う構成です。初心者〜中級者にはこちらを推奨します。

音声の流れ(概要):
マイク → AG08(エフェクト+物理フェーダー) → Streaming/Voice/AUX → Voicemeeter(バス振り分け) → OBS / Discord / 録画ソフト

メリット: AG08の操作感がそのまま活きる。Voicemeeterの設定は必要最小限。

デメリット: PC音声はAG08のCH3/4〜CH7/8に固定されるため、アプリ単位の分離はVoicemeeterの仮想入力に頼る。

Voicemeeter Potatoをオーディオルーティングの中核にし、AG08は「高品質マイクプリアンプ+モニター出力」として使う構成です。上級者やDAW連携が必要な場合に有効です。

音声の流れ(概要):
マイク → AG08 → Voice (AG08) → Voicemeeter HW INPUT 1
ゲーム音 → Voicemeeter VAIO (Virtual Input)
Discord → Voicemeeter VAIO3 (Virtual Input)
全出力 → Voicemeeterのバス(B1→OBS, B2→Discord, A1→AG08ヘッドフォン)

メリット: 5入力×8バスによる超柔軟なルーティング。Virtual ASIOでDAW連携が可能。

デメリット: AG08の物理フェーダー(CH3/4〜CH7/8)は主にモニター用途に限定される。設定が複雑。

方式A:AG08メインの詳細設定手順

AG08が主要なミキサーで、Voicemeeterは「AG08では分離しきれない音声の振り分け」を担当します。

ステップ1:AG08の基本設定

ステップ2:Windowsの出力先設定

アプリケーションWindowsの出力先AG08のチャンネル
ゲーム(既定)Yamaha AG08 CH3/4CH3/4 フェーダーで音量調整
Discord 出力Yamaha AG08 CH5/6CH5/6 フェーダーで音量調整
BGM / 効果音Yamaha AG08 CH7/8CH7/8 フェーダーで音量調整

ステップ3:Voicemeeter Potatoの入力設定

Voicemeeter PotatoのHARDWARE INPUT 1にAG08のStreaming出力を割り当て、仮想入力にはAG08のCH経由では分離しきれないアプリの音を取り込みます。

Voicemeeter ストリップ 入力ソース A1
(ヘッドフォン)
B1
(OBS配信)
B2
(Discord送信)
B3
(録画/VOD)
HW INPUT 1
WDM: Streaming (Yamaha AG08)
AG08でミックスされた全音声(マイク+ゲーム+BGM) OFF ON OFF ON
HW INPUT 2
WDM: Voice (Yamaha AG08)
マイクの声のみ(CH1+CH2) OFF OFF(B1はStreamingで取得済み) ON OFF
VIRTUAL INPUT 1 (VAIO)
未使用(将来の拡張用)
VIRTUAL INPUT 3 (VAIO3)
Discord出力先をVAIO3に設定した場合
Discordの相手の声(直接分離したい場合) ON OFF ✕ OFF ON
💡
方式Aでの2つのミックスマイナスの方法
  • AG08のSTREAMINGスイッチで除外する方法:CH5/6(Discord)のSTREAMINGスイッチをOFFにすれば、Streaming出力にDiscordの声が含まれません。この場合、Voicemeeter HW INPUT 1に入る音は最初からDiscord抜きなので、B1をONにするだけで完了します。
  • VoicemeeterのVAIO3で分離する方法:Discordの出力をVAIO3に変更し、Voicemeeter上でB1をOFFにします。こちらはDiscordの音量をVoicemeeter側でも独立制御できるメリットがあります。

ステップ4:OBSの設定

ステップ5:Discordの設定

ステップ6:Voicemeeter A1出力(ヘッドフォン)の設定

⚠️
A1出力先にAG08のCHを割り当てた場合の注意 VoicemeeterのA1出力先をAG08 CH3/4にすると、そのCHのSTREAMINGスイッチがONの場合、Voicemeeterから送った音がAG08のStreaming出力にも含まれ、二重音声の原因になります。A1出力先に使うCHのSTREAMINGスイッチは必ずOFFにしてください。

方式B:Voicemeeterメインの詳細設定手順

Voicemeeter Potatoを全オーディオの中枢にし、AG08はマイクプリ+ヘッドフォンアンプとして使う構成です。

Voicemeeter Potatoの全ルーティング表

Voicemeeter ストリップ 入力ソースの設定 A1
(AG08 HP)
B1
(OBS)
B2
(Discord)
B3
(録画)
HW INPUT 1 WDM: Voice (Yamaha AG08)
マイク音声のみ
OFF(AG08でモニタ) ON ON ON
VIRTUAL INPUT 1 (VAIO) Windowsの既定出力に設定
ゲーム音・ブラウザ等のメイン音声
ON ON OFF ON
VIRTUAL INPUT 2 (AUX VAIO) BGM/音楽アプリの出力先
Spotify、Apple Music等
ON ON OFF OFF(著作権対策)
VIRTUAL INPUT 3 (VAIO3) Discordの出力先に設定
通話相手の声
ON OFF ✕(ミックスマイナス) OFF(ループ防止) ON

各ソフトウェアの設定

ソフトウェア設定項目設定値
Windowsの既定出力デバイスVoiceMeeter Input (VB-Audio VoiceMeeter VAIO)
入力デバイス(使用しない)
OBS Studioマイク音声VoiceMeeter Output (VB-Audio VoiceMeeter VAIO) ※B1出力
デスクトップ音声無効
Discord入力デバイスVoiceMeeter Aux Output (VB-Audio VoiceMeeter AUX VAIO) ※B2出力
出力デバイスVoiceMeeter VAIO3 Input
Voicemeeter A1 出力先WDM: Yamaha AG08 CH3/4 (AG08のPHONESで聴く)
AG08 CH3/4 LINE/USBスイッチUSB
AG08 CH3/4 STREAMING スイッチOFF(二重音声防止)

応用:DAW連携(Cubase / Reaper)

Voicemeeter PotatoのVirtual ASIOドライバを使うと、AG08の音声をDAWに低遅延で取り込みながら、配信も同時に行うことができます。

📌
ASIO使用時の注意 AG08自体もASIOドライバを持っていますが、WindowsではASIOデバイスは同時に1つのアプリケーションしか占有できません。AG08のASIOをDAWが占有すると、Voicemeeter側でAG08のWDM入力が使えなくなる場合があります。DAWにはVoicemeeter Virtual ASIOを使用し、AG08はWDM接続でVoicemeeterに取り込むのが安定した構成です。

トラブルシューティング

Voicemeeterの音声に遅延(レイテンシー)がある
  • Voicemeeterの「Menu → System Settings / Options」を開き、「WDM Input Exclusive Mode」や「Engine Mode」を調整します。
  • バッファサイズを小さくすると遅延が減りますが、音切れのリスクが増えます。256〜512サンプルで試してください。
  • 自分の声のモニタリングはAG08のダイレクトモニターを使い、Voicemeeter経由では行わないでください。
音声がループ・ハウリングする
  • VoicemeeterのA1出力先がAG08のCHに設定されている場合、そのCHのSTREAMINGスイッチが必ずOFFになっているか確認。ONだとVoicemeeter→AG08→Streaming→Voicemeeterの無限ループが発生します。
  • Discordの出力をVAIO3に設定している場合、VAIO3ストリップのB2ボタンがOFFか確認。ONだとDiscordの相手の声が再びDiscordに戻ります。
  • OBSの「デスクトップ音声」が無効になっているか確認。
AG08のフェーダーを動かしても音量が変わらない
方式BでVoicemeeterをメインにしている場合、PC音声の出力先がVoicemeeterの仮想入力(VAIO等)になっているため、AG08のCH3/4〜CH7/8にはPC音声が流れていません。AG08のフェーダーはVoicemeeterのA1出力(モニタリング音声)の音量にのみ影響します。アプリごとの音量調整はVoicemeeterの各ストリップのフェーダーで行ってください。
PC再起動後にVoicemeeterの設定が消える
  • Voicemeeterの「Menu → System Settings / Options」で「Auto Restart Audio Engine」にチェックを入れてください。
  • 設定ファイルは「Menu → Save Settings」で明示的に保存できます。
  • Windowsのスタートアップに「Voicemeeter」を登録し、PC起動時に自動で立ち上がるようにしてください。
  • AG08のドライバが先に認識される必要があるため、Voicemeeterの起動遅延を「System Tray → Run at Startup with delay」で設定することも有効です。

方式A vs 方式B 比較表

比較項目方式A(AG08メイン)方式B(Voicemeeterメイン)
物理フェーダー操作◎ フル活用△ モニター音量のみ
ルーティング柔軟性○ AG08 3系統 + Voicemeeter補助◎ 5入力×8バスのフル活用
設定の複雑さ○ 比較的シンプル△ 複雑(上級者向け)
DAW連携△ AG08 ASIO直接使用◎ Virtual ASIO経由
遅延○ AG08のハードウェア処理中心△ ソフトウェア処理が増える
CPU負荷○ 低い△ やや高い
おすすめユーザーAG08メインで少し拡張したい人複雑なルーティングやDAW連携が必要な人
🎛️📱 9. Roland BRIDGE CAST X:PCとスマホで配信する接続・使い方まとめ ハードウェア 応用
📌
このセクションの前提
  • PCで配信する時:Switch(ゲーム音)+ PC音声 + マイク をミックスして配信したい
  • スマホで配信する時:PCから再生した音声 + マイク を配信したい

背面パネルの端子

端子用途
MIC INマイク入力(XLR/TRSコンボジャック)
HDMI INSwitchなどゲーム機からの映像・音声入力
HDMI OUT / THRUモニターやTVへの映像出力(パススルー)
USB-C(PC用)PCと接続。映像・音声の送受信と給電を兼ねる
USB-C(モバイル用)スマホと接続。配信音声をスマホの配信アプリへ送る
5V DC IN給電不足時に外部電源アダプターを接続する端子
⚠️
端子の正式名称・配置は製品マニュアルおよびBRIDGE CASTアプリの表示で最終確認をお願いします(ファームウェアにより表記が異なる場合あり)。

① PCで配信する時の接続(HDMI+PC音声+マイク)

物理接続

(1) 映像・ゲーム音の入力
[ Nintendo Switch ] ==(HDMIケーブル)==> [ HDMI IN ]

(2) 遅延なくゲーム画面を確認
[ HDMI OUT/THRU ] ==(HDMIケーブル)==> [ モニター / TV ]

(3) マイクの入力
[ マイク ] ==(XLRケーブル等)==> [ MIC IN ]
 ※コンデンサーマイクの場合は本体のファンタム電源(+48V)をON

(4) PCへ出力(映像・音声・給電を1本で)
[ USB-C(PC用) ] ==(USB Type-Cケーブル)==> [ PC ]

PC側の設定(Windowsの例)

  1. 「設定」→「システム」→「サウンド」を開く
  2. 出力デバイスを「BridgeCAST X」に設定
    → PCで再生する音(ゲームBGM、Discord等)がBridgeCAST Xへ送られる
  3. 入力(録音)デバイスを「BridgeCAST X」に設定
    → 配信ソフトがミックス済みの音声を受け取れるようになる

BRIDGE CASTアプリでの確認

PCに専用アプリ「BRIDGE CASTアプリ」をインストールし、以下を確認します:

チャンネル入力ソース
GAME(HDMI)Switchのゲーム音
PCPCのシステム音・通話音など
MICマイク音

これら3系統が本体内でミックスされ、「STREAM MIX」としてPCへ送られます。

💡 PERSONAL MIX と STREAM MIX は別々に調整可能

自分が聴く音量(PERSONAL MIX)と配信に乗せる音量(STREAM MIX)を独立してコントロールできます。

例:自分はゲーム音を大きめに聴きたいが、配信ではゲーム音は抑えたい
→ PERSONAL MIXのGAMEは大きめ / STREAM MIXのGAMEは少し下げる

OBS(配信ソフト)の設定

OBS設定項目選択するデバイス取り込まれる内容
映像キャプチャデバイスBridgeCAST XSwitchの映像がOBSに入る
音声入力デバイスBridgeCAST Xゲーム音+PC音+マイク音がミックスされた状態で配信される

② スマホで配信する時の接続(PC音声+マイク)

BridgeCAST XのデュアルUSB機能(PC用/モバイル用USBポートが別々にある)を使い、PCとスマホを同時に接続します。

物理接続

(1) マイクの入力(PC配信時と共通でOK)
[ マイク ] ==(XLRケーブル等)==> [ MIC IN ]

(2) PCの音(BGM等)を入力・給電
[ PC ] ==(USB Type-Cケーブル)==> [ USB-C(PC用) ]

(3) スマホへ配信音声を送る
[ USB-C(モバイル用) ] ==(USB Type-Cケーブル)==> [ スマートフォン ]

スマホ接続時のケーブル注意点

デバイス接続方法
AndroidUSB-C対応かつOTG対応なら、USB-C to USB-Cケーブルでそのまま認識
iPhone(Lightning)「Lightning – USB 3カメラアダプタ」等が必要な場合あり
iPhone(USB-C / 15以降)USB-C to USB-Cケーブルで直接接続できる場合が多い

PC側の設定

BRIDGE CASTアプリでのルーティング設定(重要)

スマホ配信では不要な音(Switchのゲーム音など)を混ぜないための設定:

チャンネルモバイル/STREAMバスへの送出理由
GAME(HDMI)OFF(不要なら)スマホ配信にSwitch音は不要
PCONPCのBGM等をスマホ配信に乗せる
MICONマイク音声をスマホ配信に乗せる
💡
この設定は本体に保存されるため、一度作っておけばPCを起動しなくても同じルーティングでスマホ配信ができます。

スマホ側(配信アプリ)の設定

  1. スマホを接続すると「外部マイク」として自動認識されることが多い
  2. 配信アプリ(YouTube Live / ツイキャス / TikTok Live等)の「オーディオ入力」「マイク」設定で BridgeCAST X(外部マイク)を選択
  3. テスト方法:
    • PCでBGMを再生する
    • マイクに向かって話す
    • スマホの配信アプリのレベルメーターがBGMと声の両方で反応するか確認

③ 繋ぎっぱなし運用のすすめ

以下のケーブルをすべて繋いだままにしておくと、配線変更なしでPC配信とスマホ配信をその日の気分で切り替えられます。

[ マイク ]          ==(XLR)========> [ MIC IN             ]
[ Nintendo Switch ] ==(HDMI)=======> [ HDMI IN            ]
[ モニター / TV ]   ==(HDMI)<======= [ HDMI OUT / THRU    ]
[ PC ]              ==(USB Type-C)=> [ USB-C(PC用)      ]
[ スマートフォン ]  ==(USB Type-C)=> [ USB-C(モバイル用)]
✅ PCで配信したい日
→ PCでOBSを起動して配信するだけ

✅ スマホで配信したい日
→ PCはBGM再生用として使い、スマホの配信アプリを起動するだけ

ケーブルの抜き差しは不要です。

④ よくあるトラブルと対処法

スマホが認識されない
  • ケーブルが「充電専用」でなく「データ転送対応」か確認
  • iPhone(Lightning)はカメラアダプタが必要な場合あり
PC音がスマホ配信に乗らない
  • PCの出力デバイスが「BridgeCAST X」になっているか確認
  • BRIDGE CASTアプリでPCチャンネルがモバイル/STREAMバスへ送出される設定(ON)になっているか確認
動作が不安定・給電不足
  • PCとスマホを同時接続すると電力消費が増えるため、「5V DC IN」端子から外部電源アダプター(5V/3A以上推奨)を接続
音が小さい・割れる
  • マイクのゲインつまみ(入力レベル)を確認
  • 各フェーダー(ミックスへの送り量)を確認
  • PC側・スマホ側の音量を確認
  • → 極端に大きい/小さい箇所を1つずつ調整
音が二重に聞こえる
  • モニタリング(PERSONAL MIX)とループバック設定が重複していないか確認

補足・参考リソース